緑内障について
網膜で受け取った情報は視神経を通じて脳に送られます。緑内障はこの視神経に障害が起きて視野が欠けてしまう病気です。片目の視野が欠けると、そちらの目だけで見た時に見えない部分が出てきます。進行すると視野の欠けは広がっていき、見える部分がどんどん少なくなって失明に至る可能性もあります。一般的に早期には視野の中心を少し外れた部分に見えない場所である暗点ができます。この暗点が進行により拡大し、見える範囲がどんどん狭くなっていきます。
欠けてしまった視野を取り戻すことはできませんが、進行を止める、あるいは遅らせることはできます。発症したら早めに眼科専門医の治療を受け、定期的に受診して進行を抑制し、良好な視力をできるだけ長く保てるようにしましょう。
緑内障と眼圧
目の中には房水という液体があります。房水は栄養を運び、一定の圧力を全体にかけて眼球の丸い形を保つ役割を担っています。この房水の流れが何らかの理由で滞ると目にかかっている圧力である眼圧が上昇します。眼圧が上昇すると視神経に障害が起こり、緑内障を発症します。ただし、眼圧が正常値の範囲にあって発症する正常眼圧緑内障は全体の70~80%にもなるとされているため、眼圧だけで判断するのは危険です。
緑内障のタイプと検査
房水の流れがどの部分で滞っているかによって、緑内障は閉塞偶角緑内障と開放偶角緑内障のタイプに分けられます。
当院では、できるだけ早期発見できるよう、3D眼底カメラや狭角眼底カメラなど最新の機器をそろえて精度の高い検査を行っています。広角眼底カメラを用いたNFLD(神経破損)の検査では、red-freeの眼底写真で神経周囲の厚さも調べています。
なお視野検査は予約制となっております。初診の方で視野検査をご希望の方は予約なしで受診していただき、診察の上、必要があれば改めて予約を取らせていただいてます。ご了承ください。
緑内障の治療
緑内障の治療は、眼圧を下げることが基本になっています。正常眼圧緑内障の場合にも、眼圧を下げる治療は進行抑制に有効です。眼圧を下げる点眼薬にはいくつかの種類があります。最初は1種類を用いた治療を行って、状態を確認しながら作用の違う点眼薬を追加していく方法が一般的です。目標とする眼圧の数値を決めて、点眼でそれをキープしていくことで眼圧をコントロールし、進行を抑制します。なお、2種類以上の点眼を行う際には、1本目を点眼した後、5分ほどおいてから次の点眼を行うようにするようお伝えしています。
緑内障の進行は通常、とてもゆっくりしているため、視野の欠けが少ない時にはつい点眼が億劫になることもあるかと思いますが、良好な視野を長く保っていくためには地道な治療が不可欠です。毎日の点眼と1ヶ月に1度の眼圧の検査、6ケ月ごとの視野検査・視神経・GDX(視神経線維の欠損を見る検査)の検査をしっかり続けて、視野障害があってもー生不自由なく過ごせるようにしましょう。なお視野検査は予約制となっております。初診の方で視野検査をご希望の方は予約なしで受診していただき、診察の上、必要があれば改めて予約を取らせていただいてます。ご了承ください。
点眼だけでは眼圧が下がらず、視野狭窄が進行してしまう場合には、レーザー治療や手術などの外科的治療を検討します。当院では、外科的治療が必要な場合は、横須賀市の久里浜眼科への紹介をしております。
SLT(選択的レーザー繊維柱
形成術)
点眼だけでは進行が止められない原発開放偶角緑内障、嚢性緑内障、高眼圧症などに行います。点眼薬の治療も継続して行います。
房水の通り道には繊維柱帯というフィルターの役割を持った部分があります。この治療では、Qスイッチ半波長レーザーをこの繊維柱帯に照射して細胞を活性化させ、房水の流れを改善します。この治療を受けた60~70%の方に効果があるとされています。治療後の眼圧の降下率は最大で20%程度です。術後すぐに効果が出る場合もありますが、1~2ヶ月後に効果が出てくるケースもあります。眼圧が下がる期間は術後6ヶ月までとされています。
ALT(アルゴンレーザー繊維柱帯形成術)に比べ、繊維柱帯の構造を変化させずに色素細胞だけを選択的に破壊するため、無色素細胞が活性化できます。何回も繰り返し照射することが可能なので、長期間の眼圧コントロールでは継続的に用いられます。
トラベクトーム
開放隅角緑内障に行われる手術です。線維柱帯の一部を電気メスの先端の電極から発生するプラズマで電気焼灼して切開・除去するという内容で、これにより房水の流れを改善して眼圧を下げます。
手術は点眼麻酔で行い、約15~20分程度で終了しますので、日帰りで受けることができます。
比較的侵襲性が低く、合併症も少ない手術です。角膜を切開して行うので、結膜や強膜の温存も可能になります。また、白内障と緑内障を同時に手術することもできます。
トラベクトーム手術の流れ
01点眼麻酔をさします
02角膜の耳側を1.7㎜切開します
03粘弾性物質というゼリー状の物質を眼内に入れて、周辺の組織を守ります
04トラベクトーム(ハンドピース)を挿入します
05隅角鏡で確認しながら先端を鼻側線維柱帯まで進めていきます
06先端の鉤状になっているフットプレートをシュレム管に挿入します
07吸引と電気焼灼を行い、ゆっくり動かして線維柱帯の切除を行います
08白内障との同時手術では、切開創を拡大し、超音波で水晶体を乳化させて吸引し、眼内レンズを挿入します
09眼内に残った粘弾性物質や逆流してきた血液を除去します
10必要な場合には、角膜を10-0ナイロン糸で縫合します